チューニングしてんだっつ〜の

ピアノの鍵盤が目の前にある。
「“ド”の音を押えてください」と言われて素直にある1つの白鍵を押えた人達は、たぶん皆オクターブの違いはあれど同じ音を選んだことだろう。
幼稚園でも学校でも「この音が“ド”だよ」と教えられてきたし。
はい、半分だけ正解!
実はその“ド”はハ長調のときのトニックトーンとしての“ド”なのだ。
これを“固定ド”と呼ぶ。
これがたとえば調号に#が1つついてト長調になったとき、そのトニックトーンはG(ソ=“固定ソ”)の音になるが、これを“ド”とする“移調ド”というものもある。
前回書いたように1オクターブは12等分されているため、どの音から弾き始めても全音全音、半音、全音全音全音、半音という順番で右に向かって弾いていけば、ドレミファソラシドと聴こえるのだ。
なぜこんな話をするかと言うと、絶対音感の持ち主だと“固定ド”の音はちゃんと“ド”に、“固定ソ”の音はきちんと“ソ”であると認識できる。
絶対音感が無ければ当然わかるはずもない。
しかし“固定ド”と“固定ソ”を同時もしくは続けて鳴らしたときに、どっちの音が高いか低いかは絶対音感が無くても判断ができる。
この2つ以上の音の高低を聴きわける能力を“相対音感”と言う。
相対音感は耳が聞こえる人間であれば誰でも持っている。
例えばそれがわずか半音の違いでも聴きわけられない人はまずいない。
相対音感が無いということは歌や音楽が全部お経に聞こえるということだ。
だから絶望的な音痴の人でも相対音感は持っている。
彼らが音痴なのは頭で理解していることを体が伝えられないだけだ。
絶対音感が無くても相対音感を鍛えれば、シチュエーションによっては絶対音感以上に音に対して鋭敏になれる。
努力が才能を超えることがあることを覚えておこう。